2022-7-8
FC東京は、札幌を3―0で下し、4試合ぶりの勝利を挙げた。声出し応援の運営検証試合で2年半ぶりに声援が戻った一戦で、U―21日本代表DFバングーナガンデ佳史扶(かしーふ、20)は、左サイドバック(SB)で後半42分までプレーした。
声の力が、自然と足を前に運ばせた。20年に下部組織からトップ昇格した佳史扶だが、直後にコロナ禍になってしまったため、味スタのピッチで声援を受けるのはこの日が初めてだった。「点を取った後の雰囲気とか初めての感覚でした。声援があると、イケイケムードになるというか、点を取る度にもっといってやろう、といつもより後押しされて新鮮でした」。ホームの声出しエリアに集まった約2000人の声を背に、左サイドを駆け上がり、チームの勝利に貢献した。

ガーナ人の父と日本人の母を持つ攻撃的なSBで、24年のパリ五輪でも活躍が期待されている。だが昨年9月1日のルヴァン杯準々決勝の札幌戦で、右膝外側半月板を損傷。全治6か月の診断を受けた。あれから10か月。くしくも札幌戦で先発のチャンスが巡ってきた。「去年僕がケガした時の相手なので、不思議な縁があると思います」と並々ならぬ思いで臨んでいた。

佳史扶がプレーするSBは、FC東京にとって特別なポジション。加地亮、徳永悠平、長友佑都、太田宏介、室屋成、そして今夏にポルトガル1部ギマラエスに期限付き移籍した小川諒也。多くの日本代表を輩出してきた。「僕もユースの時から、東京のトップでスタメンになれれば、日本代表になれると思ってやってきました。やっぱり、FC東京のSBでスタメンを取るには、代表レベルの選手じゃないといけないと思っています。まだまだ足りないですけど、そういう所にたどりつけるようにしたい」と先輩たちの系譜を継ぐ覚悟はできている。
左足のクロス精度や個人の仕掛けなど、攻撃性能は歴代の先輩たちにもひけをとらない。課題は自ら「山積みです」という守備。特に最近意識しているのはポジショニングで、「逆サイドにボールがある時のポジショニングが悪くて、出だしが遅れて、不利な状態から1対1が始まってしまっている」と分析している。コーチ陣と映像を見返して話し合ったり、センターバックの森重主将にもアドバイスを求め、改善しようと努めている。 この日も試合の序盤に相手に簡単にサイドを突破される場面があった。「立ち上がりに失点してもおかしくない軽い対応をしてしまった」と反省したが、時間が進むにつれて修正。後半は積極的に左サイドを駆け上がり、持ち味を発揮した。
ユース時代から目標にしてきた小川から、ポルトガルに旅立つ前に「佳史扶がいるから大丈夫だろ」と声を掛けられた。「本当に頼れる先輩でしたし、目標であり、超えなきゃいけない存在だとずっと思っていました。これから『FC東京には佳史扶がいるから大丈夫だったな』と言ってもらえるぐらいの活躍を、諒也くんにも、サポーターのみなさんにも見せていきたいと思います。諒也くんの言葉は裏切れないですから」。偉大な先輩たちがつないできたバトンが、いま20歳に託された。