2022-7-21
スペイン代表やドイツ代表とグループで同居するカタール・ワールドカップ(W杯)本大会が11月に開幕を控える中、6月にはキリンチャレンジカップ、キリンカップの計4試合を戦った日本。ブラジル代表を筆頭とする世界の強豪とぶつかり合い、課題と収穫を手にした。
続くこの7月のE-1選手権では香港代表、中国代表、韓国代表と対戦。どのチームも進歩を続けており、特に韓国はW杯にも出場するタフな相手だが、W杯のシミュレーションとして使える大会でないことは明らかだ。
森保一監督も国内組のみを招集しており、現在の代表ではベースとなる主力組のほとんどが欧州組となっている中、Jリーグで活躍する選手たちの猛アピールが期待されている。
香港戦前日に行われた公式会見の場で、指揮官は「3試合でできるだけ多くの選手を起用しながら大会に挑もうと思っています」と明言。続けて「W杯への思いがあるすべての選手にチャンスがあり、このE-1では個々の能力を見ながらW杯に繋げていきたい」と、個の能力が評価の対象となることを強調した。
世界に対して優位な武器
そうした中で“個の打開力”に注目が集まるのが横浜F・マリノスの宮市亮だ。2011年にアーセナルと契約してプロキャリアをスタートさせた宮市は、イングランド国内やオランダへのレンタル、ザンクトパウリを経て、初めてのJリーグクラブとして昨年夏に横浜FMと契約した異色の経歴を持つ。
18歳当時にアーセナルを率いていたアーセン・ヴェンゲル氏からも高く評価されるなど、ポテンシャルは十分。2012年にもアルベルト・ザッケローニ元監督下の日本代表でプレーした経験がある。その最大の魅力はスピードであり、横浜FMでは主に左ウイングとして活躍中だ。今季は明治安田生命J1リーグ15試合で3ゴールを記録している。
W杯に向けたメンバー選考という観点で宮市の武器は森保監督が重視してきたこととも合致。キリンカップで対戦する際、日本を分析したブラジル代表のコーチもスピードのある選手の多さに驚いたことを明かしており、世界を相手に優位に出られる部分としてシンプルかつ効果的な策の一つと言える。
また、欧州組も含むベストメンバーでは左サイドでは主に三笘薫と南野拓実が起用されてきた。どちらも一定以上のスピードに加えてそれぞれのスペシャリティを備えており、チーム戦術の中心に組み込まれるべき選手たちだ。しかし、今回のE-1選手権の目的は幅をもたらす選考の材料とすることだろう。
苦戦を強いられるであろうW杯の試合で、それぞれの状況に応じて一芸に秀でた選手たちを揃えておけるメリットは大きい。登録人数が26名に拡大されたことも、ユーティリティ性ではなく明確な武器を持つ選手の選出を後押しする可能性がある。とはいえ、その選択肢としての有用性を認めさせるためには、E-1のような急造チームで普段通りの実力が発揮できるかも重要だ。
その点についても、29歳となった宮市は「(アーセナルでの)10代では振り返ってみて焦りもありましたが、今はそういうマインドも変わってきました」と落ち着きを見せている。2012年以来の代表でのプレーに向けて「チームとして大会を勝ち取りにいく。自分はそのピースに過ぎない」と気負いもない。
かつて大きな期待を背負って海外で奮闘した快足ウインガーは、与えられる出番で力を発揮できるのだろうか。注目の初戦、香港代表戦は19日の19:20に県立カシマサッカースタジアムでキックオフを迎える。