2022-7-11
浦和レッズがホームで完勝した。ボールをしっかりと回してチャンスを量産した浦和は、前半に1点を奪うと、後半に2得点を追加。守っても、全員で連動した好守を披露し、GK西川周作がこの試合で達成した「170試合の無失点試合」というJ1最多記録に花を添えた。 結果も内容も伴ったこの試合で、スタジアムが最もヒートアップしたのは後半4分だ。1点リードして迎えた後半立ち上がり、右サイドから出てきたボールをMF伊藤敦樹がペナルティアーク手前で一閃。利き足ではない左足から放たれたボールは、地を這うようにしてゴールへと向かった。距離はあったが、名手ヤクブ・スウォビィクも防げないまま、ゴール右隅にイン。ネットを揺らしたのだ。
伊藤は口を大きく開けて叫びながらベンチへと走ると、ジャンプして抱きついてきたのはリカルド・ロドリゲス監督だ。伊藤と指揮官に乗っかるようにして、次々と選手が飛び乗った。サポーターの喜びも大きく、埼玉スタジアムを揺らしたかと思わせるほどだった。
今期の浦和は、勝ちきれない試合が多かった。リーグ戦の引き分けの数は「11」。得点や追加点を奪えないことで白星を逃したことが多かっただけに、2点差で得た勝利の確信が、先制点よりも喜びを大きくしたのだ。実際、今季の浦和は2点をリードした試合はすべて勝利している。
■4-3-3ではなく4-4-2でスタート
この試合で、FC東京は“奇襲”を仕掛けてきた。今期のメインシステムである4-3-3ではなく、渡辺凌磨と松木玖生をサイドハーフに置き、ブラジル人2トップを用いた4-4-2で試合をスタートさせたのだ。それでも、浦和イレブンは序盤から攻撃のリズムを掴むと、31分にダヴィド・モーベルグによって先制。敵将アルベル監督の出鼻をくじいてみせた。
しかし、ここからがやや厄介ではあった。FC東京は1点ビハインドにもかかわらず、ブロックを作ってホームチームと対峙したのだ。浦和が攻めあぐねている中で隙を突いてカウンターで得点を奪おうというものだった。実際、ボールを握りながらも失点をした場面はこれまで何度もある。FC東京も、レアンドロの巧みな持ち出しから機会をうかがった。だからこそ、浦和は追加点が欲しかった。
伊藤の追加点は、相手守備陣を崩したものではなかった。その直前、右サイドを攻略しようと人数をかけていたが、それがかなわず左に回そうとしたボールが伊藤に回ってきた。このボランチの前には、白いユニフォームを着た相手選手が何人もいた。それでも、伊藤は左足を振りぬいた。必ずしも崩し切る必要がないことが示されたのだ。苦しんだ試合が多かったリカルド・レッズにとって、勝ち方の一つの「解」を見つけた瞬間でもあった。
■次につながる勝利
リーグ戦の低迷、天皇杯敗退、声出し応援による“罰金2000万円問題”など、ピッチ内外で浴びた注目を吹き飛ばすかのような完勝劇だった。しかし、リカルド・ロドリゲス監督は「我々がさらに順位を上げていくために、また、ルヴァンカップやACLなど他のコンペティションでもしっかり戦っていけるよう、質を高めていきたい」と次を見据えている。
埼玉スタジアムでサポーターとともにつかみ取ったこの勝利は、自信と勝ち方をチームにもたらした。それを証明するためにも、このまま白星を積み重ねる。