2022-7-8
この日の試合でも、両チームのサポーターは試合前から試合後まで応援を存分に楽しんでいた。東京側で簡単に例を挙げるならば、試合前の“マフラーを広げるだけではない”You“ll Never Walk Aloneも、試合中のチャントも、試合後の「シャー」も、全てが懐かしい光景であると同時に大きな楽しさを伴っていた。札幌サポーターも、完敗の内容になったため最後はブーイングで終わってしまったが、声援を送る体験は楽しかったはずだ。
声援の中で試合をすることが日本で指揮を執り始めたシーズン(2020年、アルビレックス新潟)の開幕戦以来となったアルベル監督は、試合後には場内を周った。スタンドにはカタルーニャの州旗が複数広げられ、ゴール裏から「アルベル・トーキョー!」と声援を受けた。
会見で「私の名前を叫んでくれた。しっかりと耳に届いた。うれしく思う」と感謝したカタランの指揮官は、声援があることについて「素晴らしい」に加えて「美しい」という言葉を使った。「声援があることこそがサッカーでありエンターテインメントだと思う」と語る彼は「今後も声援がある中で試合ができることを強く望んでいる」。その願いはJリーグに関わるほとんどの人が持っているものだろう。
■ルールの中で成果を上げることで、ルールを変える未来に近づける
この日のSTEP2を経て、JリーグはSTEP3(声出し可能エリアは市松模様、エリアの席数の上限はなし。※収容人数の50%まで)に進もうとしている。少しずつだが着実に前に進む、というイメージだ。
一度楽しさを知ってしまうと一気に元通りになることを望みたくなるが、Jリーグは実績を積み上げている途中だ、ということを忘れてはならない。今でも自治体ごとにイベント開催に対してコロナ対策用の要請やガイドラインの設定がされており、Jリーグはルールの中でエビデンスを積み上げて「その先にある、感染対策の方針自体を見直していただく働きかけ」(野々村芳和チェアマン)に繋げたい、という構図だ。 ルールの中で成果を上げることで、ルールを変える未来に近づける。制限から解放されて元に戻りたい、と思っているのは皆同じ。クラブやリーグも苦心している。存分に楽しんで熱を取り戻しつつ、目的達成に向かって全体で着実に歩みを進めることに協力もする、ということが全試合で成立することに期待したい。